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めっき加工の現場から、技術や品質へのこだわり、業界の最新動向などをお届けします。
現場の声や知見を通じて、エルグのものづくりを深掘りするコラムです。
2025.06.30
「めっき」ってどうしてできるんだろう?
「めっき」ってどうしてできるんだろう?
電気めっきは日本では、古く江戸時代には行われていました。
少々難しくなりますが、今回は「めっき」の原理についてです。
めっきは、被めっき物の表面で電子の移動によって金属イオンが金属に変化して被めっき物に金属被膜を形成するものです。
その方法として、大きく分けて電気を使ってめっきする電気めっきと電気を使わない無電解めっきと置換めっきがあります。
電気めっきは、整流器を使用してめっき液中の陰極と陽極に直流電流を流して行います。
陰極には被めっき物を陽極にはめっきしたい金属を使用し、被めっき物(陰極)表面でめっきしたい金属(陽極)から溶解した金属イオンが、陰極から供給される電子を貰って金属になり被めっき物表面に析出します。

その反応は、以下のようになります。

ニッケルめっきの場合、めっき液中のニッケルイオンが被めっき物に析出します。

電気めっき電解研磨のような、電子の受け渡しがある反応は、電気化学反応と呼ばれています。
電気化学反応において、反応により得られる生成物の質量は、電解槽を流れた電気量に比例します。
更に、同一電気量における生成物の質量は、その物質の化学当量(原子量を原子価で割った値)に比例します。
さて、ここからは少し難しくなります。ついてきてね~
Here we go !!
電解反応において,電気分解により1グラム当量(1化学当量に相当する質量)を得るのに必要な電気量、つまり電子1mol(6×1023個)の電気量を1 F (ファラデー)とした、1 F (= 9.65 ×104 クーロン) の値をファラデー定数と言います。

例えば銀めっきでは、

となり、電気量だけ考えると、
電気量の単位クーロン(C)は、1アンペア(A)の電流を1秒間(s)流した時に流れる電気量としてAs(amperesec)となります。
これをめっき業界では時間に換算して、Ah(amperehour)として使用します。
h=3,600s、Ah=3,600As=3,600C
1F=96,500C/3,600C=26.8Ah となります。

つまり、銀1mol(107.9g)のめっきには、1F=26.8Ah の電気量が必要で、銀の電気量は、
107.9g/26.8Ah=4.026g/Ah となります。
この電気化学当量を利用して、電気めっきの反応量(めっき析出量、又はアノード溶解量)は、
電気化学当量(g/Ah)×電流(A)×時間(h)×電流効率=反応量(g)
[電流効率100%=1]となり、

また、めっき作業では、「電流密度」がとても重要な作業条件で、単位はA/dm2と表します。
めっき業界では、「デシ」 10cm×10cm=100cm2 という面積を使用するためです。
電流密度によってめっき被膜の結晶状態が異なるため、色調、光沢度などが異なるので、とても重要なんです。

部屋とYシャツと私 みたいに、電気めっきにおいてこの3つはとても密接な関係にあります。
電気化学当量の計算は、金属の電気化学定数を導くのに利用することができるからです。
ある部品にめっきする時、1Aと5Aの電流を流した場合では得られるめっき被膜の構造とめっき膜厚が異なります。
ニッケルめっきを例にすると、
10cm×10cmの部品に、ニッケルの密度を8.9g/cm3、電流効率を100%、1A/dm2の電流密度で1時間めっきした時に得られるめっきの平均膜厚 a cmは、

また、同じ部品に0.5A/dm2でめっき時間を2時間としたときの膜厚 b cmは、

同じ膜厚でも、電流密度が異なると析出状態が変化して、得られる外観が異なる場合があるので、とっても重要なんです。
これは、金属の電気化学定数の表ですが、先ほどの電気化学当量の計算は、金属の電気化学定数を導くのに利用できます。

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