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Column

めっき加工の現場から、技術や品質へのこだわり、業界の最新動向などをお届けします。
現場の声や知見を通じて、エルグのものづくりを深掘りするコラムです。
2025.07.01
なぜ脱脂が大事なのか?めっき前処理のすべて
「汚れ」敵(しつこいねー、敵じゃないって)の手の内が分かったので、次はどうやって汚れを落とそうか。
めっきの前処理の一段階目、「脱脂」は、主に加工油を素材表面から引きはがす作業です。


脱脂は主に、アルカリ、ビルダー(洗浄助剤)、界面活性剤を基本として、アルカリによるケン化反応で油脂を分解して、界面活性剤による乳化、分散、湿潤、浸透効果で素地表面から汚れを引きはがします。
脱脂は主に、アルカリ、ビルダー(洗浄助剤)、界面活性剤を基本として、アルカリによるケン化反応で油脂を分解して、界面活性剤による乳化、分散、湿潤、浸透効果で素地表面から汚れを引きはがします。

脱脂工程は、大きく分けて3工程があります。
【予備洗浄】
金属加工後の加工油は、溶媒脱脂、エマルジョン脱脂、初段アルカリ電解などの予備洗浄で80%ほど除去します。
溶媒脱脂 | ハロゲン系や炭化水素系などの溶剤で、浸漬や蒸気脱脂、超音波などの方法を使って脱脂します。
エマルジョン脱脂 | 炭化水素系溶剤に水と界面活性剤を添加した洗浄剤で、浸漬やスプレーなどの方法を使って脱脂します。
アルカリ脱脂 | アルカリ洗浄剤で、浸漬、電解、超音波などの方法を使って脱脂します。
【本洗浄】
予備洗浄で取り切れなかった油は、本洗浄で出来る限り15~19%ほど落とします。
【仕上洗浄】
残りの油をこの仕上洗浄ですべて残らず落とし切りますが、予備洗浄と本洗浄が不十分だと仕上げ洗浄に負担が掛かって、完全に取り切れなかった場合、めっき不具合の原因になります。

最近では、環境問題があってめっき工程では溶剤を使った脱脂はあまり好まれなくなったので、アルカリ脱脂について紹介します。
アルカリ浸漬洗浄では、苛性ソーダ[水酸化ナトリウム]、ケイ酸ソーダ[ケイ酸ナトリウム]などを溶解したアルカリ性溶液を洗浄液とし、浴を加温して使用します。
温度の上昇に伴って洗浄効果が飛躍的に高まりますが、非鉄金属の銅、すず、亜鉛、アルミニウムなどの金属やその合金では、高温処理やpH10以上で腐食させてしまう場合があります。
【水酸化ナトリウム】

水酸化ナトリウムは、油脂をアルカリ加水分解して脂肪酸アルカリ塩(石鹸)とするケン化反応に必要です。
水酸化ナトリウムの補助成分として炭酸塩、リン酸塩などのビルダーや脱脂力を高めるために界面活性剤として、アニオン系、ノニオン系の両性界面活性剤を添加します。
【ビルダー】
ビルダーには、
炭酸塩の炭酸ソーダ[炭酸ナトリウム]
重炭酸ソーダ[重炭酸ナトリウム]
リン酸塩には、
第三リン酸ソーダ[第三リン酸ナトリウム]
トリポリリン酸ソーダ[トリポリリン酸ナトリウム]
ケイ酸塩には、
メタ、オルトケイ酸ソーダ[メタ、オルトケイ酸ナトリウム]が一般的です。
どの成分も、加水分解で水酸化ナトリウムとなり、ケン化反応を補助します。

【界面活性剤】
界面活性剤は、汚れの層に脱脂液成分を湿潤、浸透させる効果と、引きはがした油分を処理液中に分散させ、表面に浮上させない乳化分散作用があります。
しかし、鉱物油ではケン化反応は起こらないため、この方法では脱脂できません。
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