コラム
Column
めっき加工の現場から、技術や品質へのこだわり、業界の最新動向などをお届けします。
現場の声や知見を通じて、エルグのものづくりを深掘りするコラムです。
2025.12.05
亜鉛めっきについて
亜鉛めっきは、自分を犠牲にして鉄を守る「鉄鋼部品の防食」として活躍しています。 更に、亜鉛めっきそのものの耐食性を上げるためにクロメートという処理が行われることで防食機能がパワーアップしました。
また、光沢剤の添加によって光沢めっきが可能になったことで、装飾用としても活用されています。

亜鉛めっきの何がすごいかって特性をちょっとまとめておきますね。
【電気化学的特性】 冒頭に書きましたが、亜鉛めっきがどのめっきより優秀なのが、鉄に対する防食性。
これは、電極電位(金属の電解質溶液中の電位)によるもので、亜鉛の電位は-0.76V、鉄は-0.47Vなので海水なんかの電解質溶液中でつなぐと、電流は鉄から亜鉛に向かっていくので、亜鉛が溶液中で陽極となって溶解することで、鉄が錆びるのを防ぐっていう仕組みです。
【加工性】 亜鉛はモース硬度で2.5と純鉄の4.5と比べて少し軟らかいです。
また、常温では脆いので、めっき後の曲げ加工はあまり得意ではありませんが、100℃~115℃になると、延展性は大きくなるので加工性は良くなります。
但し、200℃を超えると再び脆くなるので注意が必要です。
【導電性】亜鉛の電気抵抗は5.9×10-6Ωcm、鉄は9.8×10-6なので、鉄よりも少し低いです。
なので、電気部品としては良いのですが、亜鉛めっきのままでは亜鉛が腐食して抵抗が高くなってしまいます。
これを防ぐために亜鉛の耐食性を向上させ、導電性のあるクロメート処理を行います。
【脆性(ぜいせい)】 高抗張力鋼に亜鉛めっきをすると問題になるのが、脆性です。
ロックウェルCスケール硬度40以上の鉄鋼にめっきすると、明らかに脆くなり抗張力が低くなります。
これは、めっき前処理の酸浸漬、陰極電解洗浄やめっき中に発生する水素が原因で、「水素脆性」と呼ばれています。
なので、めっき後出来るだけ早く200℃前後で数時間熱処理することが必須となります。

【はんだ付け性】電気部品では亜鉛めっき面にはんだ付けをすることが多くあります。
ただ、当然クロメート処理をしているので、はんだ付け性の悪いクロメート皮膜が表面にあるわけです。
なので、フラックスに弱い薄い光沢クロメートにする必要があります。
【耐食性】亜鉛めっき自体は、腐食しやすくて、塩基性炭酸亜鉛[ZnCO3・Zn(OH)2]の白サビが発生します。
これが亜鉛の欠点で、白サビが進行すると防食作用も低下し、接触抵抗が大きくなることで電導性が下がってしまいます。
また、白サビによって体積が増え、嵌合性やすり合わせも損なわれてしまいます。
これを解決するためには、耐食性に優れたクロメート皮膜で覆う必要があります。
じゃぁ、はんだ付け性と耐食性の両立は難しいんだねー。
現在、実用化しているめっき浴はこのようなものがあります。

【シアン化亜鉛浴】シアン化物を使うので、排水処理や環境面で敬遠されそうですが、次の理由によって一般成形品の過半数がこのシアン浴によって加工されています。その長所は、
①経験値が非常に高い
②低い原価なのに、防食と装飾面で優秀なので需要が多い
③他の浴より、均一電着性と被覆力が優れている
④他の浴より、電流密度範囲が広く、高電流が掛けられるので効率が良い
⑤めっき浴が安定しているので、作業性、管理共に扱いやすい
⑥浴組成、作業条件を変化させることで色々な性能のめっきが可能
⑦めっき液の腐食性が低いので設備を傷めない
⑧シアンの処理方法が確立して処理が簡単になった


欠点としては、
①シアンの毒性が問題
②重金属と錯化合物を形成すると分解が困難に[例えば、フェロシアン化鉄(III)]
③鋳鉄が苦手
④電流効率が比較的低く、電流密度を上げると効率が低下
⑤高炭素鋼で硬いものには水素脆性の影響が大きい
【ジンケート浴】水酸化ナトリウムと酸化亜鉛を使った浴で、光沢剤を加えることで光沢のあるキメの細かい亜鉛めっきが得られます。
その長所として、
①シアンを使わない、排水処理が簡単
②シアン浴に近い良質なめっきが可能
③作業性、浴の管理が簡単
④経済的
欠点としては、
①光沢範囲が狭いので粗い析出になりやすく、外観がやや劣る
②均一電着性や被覆力がシアン浴より劣る
【ピロリン酸亜鉛浴】非シアン浴と、酸性浴の腐食性を改善するために開発された。
光沢剤の添加によって、非常に光沢が良く、バレルめっきに適している。
注意点は、
①pHの許容範囲が狭いので、浴のpH調整が難しい
②ピロリン酸:亜鉛の比率管理が重要
③鉄以外の重金属不純物に敏感
【塩化亜鉛浴】電動性が良いので、連続高速めっきに活用されていたが、腐食性が高いので、設備の劣化が問題であったが、優れた添加剤が開発されたことでシアン浴の代替浴、光沢酸性塩化浴として活用されることが多くなった。
この浴の特徴は、
①電流効率がとても高い(93~97%)
②光沢が良い
③他の非シアン浴よりクロメート処理が簡単で、シアン浴と同様なクロメート皮膜が得られる
④他の浴にないレベリング作用がある
⑤鋳鉄、窒化鋼にも直接めっきが可能
⑥アルカリ浴よりも光沢剤が安定していて長持ちする
⑦排水処理が簡単、中和のみ

欠点は、
①均一電着性が悪い、低電流密度部にめっきが付きにくい
②めっきの延展性があまり良くない、浴中の鉄不純物が増えると脆くなる
③作業温度範囲が狭い
④めっき液による腐食性が高く、設備管理が大変
⑤クロメート処理の前にめっき表面に吸着した界面活性剤の除去が必要
⑥めっき品のスポット溶接部に界面活性剤の影響で電解質が浸み込み腐食することがある
⑦混合したとき、他の排水の処理を困難にする可能性がある
⑧高純度の塩化亜鉛、添加剤が高価
【硫酸亜鉛浴】主に、連続めっきに使用される。
その長所は、
①材料費、管理費、排水処理費など最も経済的
②電気伝導度、電流効率が共に高く、高速めっきが可能
③高電流密度でも比較的緻密なめっき被膜が得られる
④めっき浴が安定していて、不純物に鈍感なのでめっき浴の管理が簡単
⑤作業条件範囲が広い
⑥鋳鉄、鍛造鋼にも直接めっきが可能
⑦排水処理が簡単

欠点は、
①均一電着性が悪く、低電流密度部の被覆力が弱いので単純な形状のものにしかめっきできない
②光沢が弱いので装飾効果は劣る
【ほうふっ化亜鉛】この浴は、高速めっき用として開発されたものですが、他のほうフッ化浴と同様に、排水中のふっ素化合物の処理設備や管理が複雑なことです。

お問い合わせ
Contact
お問い合わせフォームはこちら
お電話でのお問い合わせ
0274-62-2421
営業日カレンダー