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めっき加工の現場から、技術や品質へのこだわり、業界の最新動向などをお届けします。
現場の声や知見を通じて、エルグのものづくりを深掘りするコラムです。

2025.12.12

合金めっきについて

合金めっきは2種類以上の金属を、1回のめっき処理で共析させるものです。
合金は、複数の元素からなる金属で、組成を調整することで機械的な強度や耐食性、外観における色調や加工性などの性質を変化させて性能を向上させることが可能です。

合金めっきとするのは、次のような理由があります。
①溶融法では混ざりにくく、均一な組織になりにくい
②一部の合金の固溶体(固体中に異種原子が均一に溶解した結晶質の個体)を形成することが出来る
③珍しい金属間化合物を形成することが出来る
④めっき被膜は微細な結晶になりやすく、一部は非晶質(原子やイオンが規則正しく並んでいない個体)になる
⑤単独では電析しない金属や非金属が合金となって析出することが出来る
⑥融点がかけ離れている金属の合金が可能
⑦加熱するとめっき被膜内で化合物化し特性が向上する

簡単に言うと、合金めっきは、合金とめっきの長所を活かした表面処理で、単一金属のめっきでは得られない性能を持ち、様々な分野で活躍しています。

現在、実用化しているめっき浴の一例で、本文では赤字の合金を紹介します。
Ni-P、Au-Coについては、他のコラムで紹介していますので、ご覧下さい。

【銅-スズ(Cu-Sn)】この合金は「青銅」と言われ、ずーっと昔から利用されてきました。
「青銅めっき」も然り、歴史は非常に古いんです。
一般的にめっき浴の種類としては、シアン化物、やピロリン酸塩などを使って金属錯塩とすることで銅とスズの析出電位を近づけて共析させています。
この銅-スズ合金のうち、スズを7~20%含む黄色~赤色のものを青銅「ブロンズ」と呼びます。
スズを40~50%含む白っぽいものを「スペキュラム(鏡)」と呼びます。

このめっきは、耐食性に優れており、クロムめっきの下地めっきとして使われています。

外観は、光沢または24K金めっきに似た艶消しがあり、スペキュラム系はアルミニウム、無光沢ニッケル、無光沢銀に似ています。
めっき速度が速く、つきまわりが良く、更に平滑めっきが可能です。
めっき被膜の硬度もそこそこあるので、バフ仕上げも可能です。
また、亜鉛ダイカストに直接めっきすることも特徴の一つです。

また、スズ酸塩-シアン化銅浴にシアン化亜鉛や酸化亜鉛を添加した、銅-スズ-亜鉛の「三元合金めっき」が可能です。
このめっきは、配合によって銀白色、真鍮色、金色の被膜が得られ、金属アレルギー対策にも使われています。

【銅-亜鉛(Cu-Zn)】この合金は、皆さんお馴染みの「黄銅」と呼ばれる一般的には「真鍮」です。
古くから金のイミテーションとして装飾用途に使われてきました。
工業的には、加工が簡単なので、カメラ部品や配線金具、スイッチ端子、時計用文字盤、楽器など耐食用、摩耗防止用に利用されています。

このめっき浴では、シアン化銅、シアン化亜鉛または酸化亜鉛、錯化剤としてアンモニアが使われています。
この浴の肝は、過剰なシアン化合物の添加による、シアン錯塩の存在です。
また、浴中のCu/Zn比によってめっき被膜中の比率が変化するので、色味も変化します。
銅が多いときは、ブラスレッド(Brass[ブラス]は、金管楽器と言う意味があります。トランペットやトロンボーン等の管体が真鍮で造られているためです)、亜鉛が多いときは、ジンクピンクとなります。

【スズ-ニッケル(Sn-Ni)】このめっきは、わずかにローズピンクがかかったステンレス鋼のような色調で、耐食性、耐摩耗性が優れています。

均一電着性は良いのですが、レベリング性が乏しいので、ヘアライン加工をした製品、スピン加工(同心円状に細かい線状の模様(凸凹)を付ける研磨加工)した製品や複雑な形状の製品などに利用されています。
ピロリン酸塩浴やフッ化物浴がありますが、ピロリン酸塩浴は、大阪市立工業研究所の特許技術となっています。
このめっき被膜は、元々耐食性が優れていますが、25μm以上の厚い膜になると更に耐食性が上がります。

また、はんだめっきの代替として、このめっきを利用することもあります。
はんだめっきは、非常に軟らかいのでエッチングの時に断線してしまうことがあります。

ですが、このめっき被膜は、550~750Hvほどの硬さがあるので、傷がつきにくくエッチングレジストとしての耐食性も含めて優秀です。
欠点として、可溶性合金のため、はんだめっきに比べてはんだ付け性が劣ってしまうことです。
最近では、金めっきの下地めっきとして利用されている銅や銅合金、ニッケルめっきではピンホール腐食の問題がありますが、スズ-ニッケル合金を金めっきの下地めっきに使うと、金めっきが薄くても本来の高耐食性のため腐食しにいので、接触抵抗が大きくなることはありません。

更に、銅-スズめっきと同様に、スズ-ニッケル-銅の「三元合金めっき」が可能です。
この皮膜は、黒色ニッケルや黒色クロムめっきにない、黒味がかった外観が得られます。
めっき被膜中のそれぞれの含有率は、スズ約60%、ニッケル約36%、銅は4%程になります。
他の合金と同様に、組成によって色調が変化します。
また、スズ-ニッケル-モリブデンの黒色三元合金めっきは、ソーラーコレクター(動力用の太陽放射を集積するための装置)として利用されています。

【スズ-コバルト(Sn-Co)】この合金の特徴は、クロムメめっき被膜に似た、わずかに青味がかった白色光沢の外観が得られることです。
それなので、クロムめっきの代替として活用されています。
クロムめっきは、六価クロムの環境問題やつきまわりの悪さが問題になりますが、スズ-コバルトめっきは、低毒性で、つきまわりが良いが、クロムよりは耐摩耗性が劣る。
つきまわりが良いことで、バレルめっきが可能になり、生産効率が良いとも言えます。

めっき浴には、2価スズ塩を用いた「ピロリン酸塩浴」と4価スズ塩を用いた「スタネート浴」があります。
ピロリン酸塩浴の長所は、弱アルカリ性で低腐食性、被膜の色調が安定していることです。

短所は、2価スズの酸化で4価スズになり、自然消耗されることと、めっき液が不安定になりやすいことです。
一方、スタネート浴の長所は、スズ塩の安定性が良く、電流密度が広いので、色調の変化が少ないことと、合金組成を変えることで色調を変化させることが可能になることです。
短所は、有機不純物の蓄積により、つきまわりが悪くなることとpH管理が重要であることです。

この浴も、亜鉛などのもう一つ元素を加えることで、三元合金めっきが可能になります。

【スズ-亜鉛(Sn-Zn)】従来鉄鋼の防食で使われてきたスズと亜鉛は、スズのカソード防食と亜鉛のアノード防食です。
しかし、スズは、ピンホール腐食、亜鉛は自己犠牲による被膜の浸食が問題になります。

スズ-亜鉛合金は、双方の金属の欠点を補うのが特徴です。
この被膜は、鉄よりも少し卑な電位をもつアノード防食被膜ですが、鉄との電位差が小さいので、腐食の進行が緩やかになります。
また、スズ自身は腐食に強いので、被膜の消耗は亜鉛よりもかなり少ない被膜となります。
スズの含有率が75~80%になると、耐食性は最大になります。
更に、クロメート処理を行うことで、スズ含有率は50~80%でも耐食性はパワーアップします。

被膜の特徴は、柔軟性があることで、折り曲げ、カシメ、などの二次加工にも強いです。 更に、はんだ付け性にも優れ、ウイスカもスズ-鉛合金よりも発生しにくい被膜となります。

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