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Column
めっき加工の現場から、技術や品質へのこだわり、業界の最新動向などをお届けします。
現場の声や知見を通じて、エルグのものづくりを深掘りするコラムです。
2025.07.23
ニッケルについて
ニッケルは、耐食性に優れ、かたさ、柔軟性など物理的性質も良好で、色調も良く変色しにくい金属で、様々な素材に対して直接、密着の良いめっきが可能です。
また、めっきの浴種、めっきの用途も多様で、防食、装飾、電鋳の他、防食と装飾を兼ね備えためっきもあります。

例えば、鉄鋼、銅、銅合金、亜鉛ダイカストなど各種の素地金属上にニッケルめっきを下地めっきとして、その上にクロムめっきをするのは、防食と美観を同時に実現しています。
但し、鉄鋼上にニッケルめっきをした場合には、ある程度めっき膜厚を厚くして、ピンホールのない状態にしなければ、防食は難しくなります。(耐食性と耐摩耗性参照)
そのため、鉄鋼上のニッケルめっきは、2層、3層のような多層めっきにすることによって防食効果を向上することができます。
先述しましたが、ニッケルめっき浴に使用できるニッケルイオンの供給元になるニッケル塩の種類が多いので、めっき浴の種類も多いのが特徴です。

中でも、良く使われているめっき浴です。


光沢ニッケルめっきは、耐食性とともに美観を整えることが目的ですが、無光沢ニッケルよりもつきまわりや耐食性が劣ります。
では、それぞれの特徴を紹介しましょう。
【ワット浴】Watts氏浴が正式名称のワット浴は、ニッケルめっきの基本中の基本。
とても重要な浴種なんです。
硫酸ニッケルと塩化ニッケルとほう酸を含むめっき液です。
めっき屋として、この浴の良いところは、各成分は広い濃度範囲で使用できるということ。
また、比較的大きな電流がかけられるので、高速で厚付けめっきが可能となります。
この浴には、添加剤を加えない「無光沢浴」と、光沢剤などの添加剤を加えた「光沢浴」があります。
ワット浴の中でも、有機光沢ニッケル浴に添加する光沢剤は、1次光沢剤、2次光沢剤の2種類があります。
1次光沢剤は単独では素地の光沢と同程度の光沢を得ることが可能ですが、2次光沢剤と併用することで平滑作用のある良好な光沢めっきが可能になります。
1次光沢剤は、2次光沢剤の濃度範囲を広くし、応力を減少させる作用があります。
また、添加量が十分であれば、めっき被膜は圧縮応力を示すようになります。
光沢めっきに有効なのは、2次光沢剤なので1次光沢剤は補助剤であると言えます
1次光沢剤は、=C-SO2-の構造をもつ有機化合物が多く利用されており、広い濃度範囲での処理が可能です。
例として、サッカリン、1・5ナフタリンジスルホン酸ナトリウム、1・3・6ナフタレントリスルホン酸ナトリウムなどがあります。

2次光沢剤は、光沢作用は大きいですが、1次光沢剤と併用することで平滑な光沢めっきが可能になります。
金属の塩類と有機化合物がありますが、有機化合物の方が多用されており、C=O、C=C、C≡C、C=N、C≡N、N-C=S、N=Nの構造をもちます。
極少量添加するだけで光沢が得られますが、ピットや不純物に敏感であるなどの欠点があるので注意が必要です。

例としては、クマリン、2ブチン-1・4ジオール、エチレンシアンヒドリン、ホルマリン、チオ尿素などがあります。
平滑化作用(レベリング作用)は、微小均一電着性とも呼ばれ、素地金属や研磨キズなどを目立たなくし、平滑にすることです。
平らなものを除き一般的に被めっき物は、曲がりや凹凸があり全体に均一にめっきが付くか否かの性質は均一電着性と呼ばれているが、平滑化作用は、被めっき物全体の凹凸でなく、表面の微小なくぼみをめっきで埋めて平滑にすることを意味しています。
平滑化作用のある添加剤を、レベラーやレベリング剤と呼んでいます。
レベリング剤は、くぼみの中よりもくぼみの周りや凸部に多く吸着し、吸着した箇所の結晶の成長が抑えられることで、くぼみの中にめっきされる量が、くぼみの周りの面よりも析出量が多くなるため時間の経過とともにくぼみが埋まっていきます。

【全塩化物浴】この浴は、塩化ニッケルとほう酸からなるめっき液です。
ワット浴より、結晶が緻密で平滑性があり、厚めっきが可能ですが、硬くて柔軟性はありません。
また、塩素イオンが多いので、内部応力が大きいことが欠点です。
得られるめっき皮膜の外観は、暗褐色の無光沢です。
ある条件では、半光沢に近いめっきが得られますが、内部応力が増大します。
【スルファミン酸ニッケル浴】この浴は、スルファミン酸ニッケルとほう酸、塩化ニッケルを添加した2種類の浴があります。
このめっきで得られる皮膜は、内部応力が小さく、柔軟性があり、引張り強さも比較的高いというメリットがあります。
また、めっき速度が速いので、電鋳などにも使用されています。
【高硫酸塩浴】この浴は、ちょっと特殊で、塩化アンモニウムと硫酸ナトリウムを含む浴です。
用途は、亜鉛ダイカストに直接めっきする場合とジンケート処理(素地に亜鉛皮膜を付ける処理)をしたアルミニウムに直接めっきをする場合の2つがあります。


【ウッド浴】この浴は、「ストライク浴」とも言われ、ステンレスのような表面に不動態化皮膜が形成されているような素材に対して、表面の活性化と同時に密着の良い薄いニッケル皮膜を付けることが可能です。
こうすることで、その後に行うめっきの密着性を良くします。
ステンレスの他に、ダブルニッケル、ニッケル合金、クロム合金、青銅などに使用されます。
このめっき浴は、陰極電流効率は良くないのですが、つきまわりと密着性が抜群で、結構重宝されています。
ただ、塩酸浴なので、処理中刺激性のあるミストが発生するので、環境面の配慮が必要です。
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