コラム

Column

めっき加工の現場から、技術や品質へのこだわり、業界の最新動向などをお届けします。
現場の声や知見を通じて、エルグのものづくりを深掘りするコラムです。

2026.05.07

ICPについて

ICPは、高周波誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma)を意味しています。

ICP発光分光分析法は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES、ICP-AES)の略称で、無機分析では、汎用性が高い分析手法です。
原子吸光分光法の燃焼ガスAir-C2H2は、励起温度が2,000~3,000Kであるのに対し、燃焼ガスアルゴンを使用するICPは、励起温度が5,000~7,000Kと高温で多くの元素を効率良く励起することが可能です。


また、アルゴンガスは不活性なので酸化物や窒化物が生成しにくいことで化学反応を起こしにくくしています。
発光したスペクトル(光の波長)から元素を分類して定性し、光の発光強度から元素の濃度を求めます。

※K:ケルビン 
熱力学温度(絶対温度) 絶対温度は、0度以下にすることができません。この温度を「絶対零度」と言って、K(ケルビン)という単位が使われます。
0 K= -273℃

CP発光分光分析装置は、試料導入部、発光部(プラズマ励起源)、分光測光部(分光部と検出器)、信号処理部(制御と演算)で構成されています。

試料導入部は、原子吸光と同様に噴霧器(ネブライザー)によって吸い込ませた試料を霧状にしてチャンバー内に噴霧し、霧状の試料は選別された後、プラズマに導入されます。
その他、水銀やヒ素、ビスマス、アンチモン、セレンなどを分析する際に利用される、還元剤を試料溶液に添加して水素化物や金属蒸気を生成させて、チャンバー内で液体と気体を分離してプラズマにガスだけを導入する「水素化物発生法」や還元気化法があります。

発光部(プラズマ励起源)は、プラズマを発生させる場所ですが、大きく分けて3か所にアルゴンガスを供給しています。
プラズマとは、プラスの原子とマイナスの電子が狭い空間に同じ密度で散らばっている、電荷がゼロの状態のことを言います。

ICP発光分光分析装置では、石英で出来た3重の管構造のトーチの外側にあるコイルに高周波を流してトーチ部に電界を発生させ、そこにアルゴンガスを流し放電させることによってプラズマを生成させています。

プラズマガスは、石英管を冷却するために、3重石英トーチの一番外側を流れるアルゴンガスです。アルゴンガスのカーテンで覆われるために、プラズマの中心部が空気から遮断する役目も果たします。
補助ガスは、プラズマをトーチ上部より浮かせるために、アルゴンガスを3重石製トーチの中間に流します。 高塩濃度の試料や、有機溶媒を分析する際には、トーチ上部に塩や炭素が析出して目詰まりを起こすことでプラズマが消えてしまうことがあるので、ガス流量の調節が必要です。

キャリアガスは、3重石英トーチの中心を流れるガスで、ネブライザーが噴霧したエアロゾルをプラズマ内に導入させる役割があります。
このガスの流量は、プラズマの安定性や装置感度、再現性などの分析精度に影響するため、最適な条件設定が必要になります。

プラズマ内に導入されたエアロゾルは、脱溶媒、解離、原子化またはイオン化され、アルゴンプラズマから得たエネルギーで基底状態から励起状態に変化します。
励起状態は、不安定なので瞬時にスペクトル発光して基底状態へ遷移してしまいます。

ICP発光分光分析では、このスペクトルの発光線を使って定性、定量分析を行っています。
分光測光部のうち分光器は、発光部から放射された多数の原子スペクトル線を回折格子の角度とスリットの移動によって走査し、分離します。(分解能)
そして、特定の波長のスペクトルのみを検出器へと導きます。

また、検出器には、光電子増倍管または半導体検出器が使用されています。
光電子増倍管は、光電効果によってスペクトルを電気信号に変換して増幅することで高感度な検出が可能です。
半導体検出器は、個体素子(Si)内で、入射光子から電子が発生することを利用して、その電子の電荷量を検出します。
発光分析法は相対分析法のため、含有率が既知の試料(検量線試料)とスペクトル強度を比較して未知試料の含有率を算出します。通常は、複数の検量線試料によって検量線を作成します。

最後に、干渉についてですが、ICP発光分光分析装置は、プラズマの温度が高いために原子吸光光度計などと比較するとかなり干渉の影響を受けにくいと言えます。
但し、高マトリックス濃度の試料を分析するケースが増えた昨今では、干渉による分析値への影響が生じてしまう場合があるので、注意が必要です。

物理干渉とは、試料の粘性、表面張力、密度などの物理的要素によってプラズマへの導入効率が変化してしまう現象をいいます。
要は、例えば、粘性があると導入量が下がり、発光強度が低下することで分析値が低くなってしまうと言うことです。
物理干渉を軽減するためにはマトリックスマッチング法が有効で、検量線作成用の標準液と試料の液性が一致するように、酸の種類、濃度、マトリックス成分濃度を一致させます。
また、内部標準法は、内部標準物質を測定元素と同時にモニターすることで、物理干渉の影響を補正する方法です。

化学干渉とは、プラズマ内の試料が脱溶媒から原子化までの過程で、難解離性化合物を形成してしまうことで、解離が出来なくなり、原子化効率が変化してしまうことを言います。
ICP発光分光分析では、プラズマ温度が高いので化学干渉の影響は小さいと言えます。

イオン干渉とは、試料中にアルカリ金属などイオン化されやすい金属が多く含まれるとき、プラズマ内の原子密度とイオン密度のバランス(イオン化平衡)が崩れることを言います。
イオン干渉を軽減するためには、物理干渉と同様にマトリックスマッチング法が有効です。
内部標準法では、測定波長の励起エネルギーに近い内部標準元素を使って補正することができます。

分光干渉とは、共存成分の発光スペクトルとターゲットのスペクトルが重なる現象を言い、例えば、鉄鋼中のNb、Taの場合、NbのスペクトルはFeのスペクトルから少し離れた位置に存在しますが、TaとFeのスペクトルは完全に重なってしまいます。
この分光干渉を補正するには、分光干渉の影響が無い波長を選択する必要があります。

PDFはこちら

コラム一覧へ戻る

お問い合わせ

Contact

pdf

営業日カレンダー