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めっき加工の現場から、技術や品質へのこだわり、業界の最新動向などをお届けします。
現場の声や知見を通じて、エルグのものづくりを深掘りするコラムです。

2026.05.14

蛍光X線膜厚計について

めっき業者にとって、めっき膜厚の管理はとても重要です。
めっきを必要とする部品は、めっきを含む公差が指定されているものもあるので、お客様の要求にお応えしなければなりません。
また、めっき業者にすると、指定膜厚以下では論外ですが、お見積り時の膜厚以上に余計にめっきすると生産コストに影響します。
今回は、めっき膜厚を確認する方法のうち、製品を傷つけず非破壊で検査する「蛍光X線膜厚計」という測定機器をご紹介します。

蛍光X線膜厚計は、レントゲンなどでおなじみの物質を透過・吸収する性質をもつX線を使います。
このX線の吸収は、物質を構成する元素の原子番号が大きいほど吸収効果が大きくなります。
例えば、人をレントゲン撮影した場合、骨は原子番号20のカルシウム、ほかの組織を形作る有機物は炭素、水素、酸素の他、水分といった軽元素で構成されています。

そのため、原子番号が小さい組織や水分にはX線は殆ど吸収されずに、体を透過して写真乾板を感光します。
逆に、骨の部分は吸収効果を受けて写真乾板までX線が透過されずに、感光しません。
その結果、レントゲン写真では骨の形状や軽元素より原子番号が大きな体内に入り込んだ異物、や病巣などの診断に役立っています。

更にX線は、透過や吸収だけでなく、「励起」という現象があります。
「励起」は、物質にX線を照射した時、物質に含まれる元素が 『蛍光X線』 という固有X線を放出することです。
この放出された 『蛍光X線』 は元素固有のエネルギーを持っているので、X線エネルギーを調べることで未知の成分を調べること(定性)が可能になります。

ちょっと難しくなりますが、X線の発生について少々お話しします。

カルシウム原子は、プラスの電荷をもつ中央に陽子と中性子で構成された原子核のまわりを一定の距離を保ちながら、マイナスの電荷をもつ20個の電子がぐるぐると回っています。
c通常、原子は陽子(+)と電子(-)の数が同じで中性の状態になっていて、原子核に近い方からK核、L核、M核と決まった個数の電子が入る場所が決められています。

X線を物質に照射すると、内側のK核の電子が弾き飛ばされてK核に空席ができると、原子は不安定な状態(励起状態)になります。
なので、原子は安定化するためにと外側の電子で空席を埋めようとします。
その際、核(軌道)のエネルギー差がX線として放出されるのです。

原子核のエネルギーは、K核>L核>M核と、原子核に近い核ほど高くなり、電子がL核からK核へ遷移する時に放出される蛍光X線をKα線、M核からK核へ遷移するときに放出される蛍光X線をKβ線といいます。
X線のエネルギーは、E(Kα)<E(Kβ)の関係があり、
その発生確率は、I(Kα):I(Kβ)=10:1~2となっていて、それぞれのX線の強度比を表しています。

X線強度とは、可視光線で言う明るさに相当し、単位時間あたりのX線光子の数
(cps:counts per second)という計数率で表されます。

例えば、元素Aと元素Bに一次X線を照射すると、元素Aの蛍光X線(XA)と元素Bの蛍光X線(XB)が同時に発生します。 元素はそれぞれ固有のX線エネルギーを持っているので、それぞれを分けてX線強度の測定が可能になります。

膜厚を測定する際には、この現象を利用して素材とめっきから発せられるX線強度を区別して、更に膜厚に比例してそれぞれのX線強度が変化することを利用して膜厚を求めています。

実際に蛍光X線により膜厚を測定するためには、あらかじめ厚みの分かっている薄膜(標準箔)を使用して作成した「検量線」を使います。【検量線法】

また、多層薄膜や合金膜では、理論強度計算を利用したFP法(ファンダメンタルパラメーター法)により膜厚を算出することもできます。

但し、蛍光X線法における膜厚とは、相対膜厚であって、絶対膜厚ではありません。
これは、蛍光X線法では、ある一定のX線照射領域(単位面積)から発生するX線強度を測定しているためで、X線強度が原子の数(重量)に比例することによって面密度(g/cm2)を求め、これを純元素密度(g/cm3)で割ることで、絶対膜厚に換算しています。

なので、純物質の密度と異なるサンプルを測定する場合には、その密度の差が誤差になります。

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